企業向けDAC情報キット

一度回収されたCO2は、熱を利用して溶剤や吸着剤から脱着・回収されます。化学溶剤や吸着剤は次の回収サイクルに向けて再利用されます。その他新たなDAC技術としては、パッシブ、膜、電気化学システムを含むものがあり、現在研究開発の活発な段階にあります。

DACによるCO2除去は、カーボンクレジットの組成にもつながり、排出量を相殺するために購入することができます。Google やAmazon、Swiss Reやアリババなど、世界中の企業がネットゼロを目指すことを公約しており、DACはその目標を達成する一つの手段となります。

さらに、独自のDACアプローチを生み出し、研究開発しているスタートアップも数多くあります。 現在存在する30以上のDAC企業の多くは、DAC Coalitionのメンバーであり、このページに掲載しています。

カーボンクレジット市場は、新たなネガティブエミッション技術の登場と、多くの企業や組織の排出削減方法の模索により、活発化しています。DAC技術はその永続性と効率、そして定量化の観点から、すでにこの市場で重要なソリューションとして台頭しています。DAC由来のクレジットを早期購入することは、これらの技術への投資につながり、CO2除去だけでなく、技術自体のコスト削減と商業化、スケールアップに貢献します。

一方、非ポイントソースのCO2排出（乗用車、農作業、凍土の融解など、より小規模で日常的な発生源に起因するもの）については、トータル量は非常に多いものの、それぞれの場所で排出されるCO2はごくわずかなため、CO2を回収することはコスト面、技術面からみて困難だと言われています。DACは、このような非ポイントソース排出によって大気中に分散・蓄積したCO2を除去することができます。

技術と産業が進歩し、より大規模なプロジェクトが実施されるにつれて、CO2回収・貯留のコストは大幅に低下すると予想されます。そして、DAC技術への早期投資はこのコスト低下の加速に貢献します。

DACはまた、地球上のどこにでも設置することができます。ポイントソース回収のようにCO2排出源の近くに設置する必要はなく、森林/植林のように特定の気候条件や生態系などもありません。しかし、DACは唯一無二のCO2除去技術ではありません。あくまで、多様なツールボックスの中の、貴重なソリューションのひとつです。蓄積したCO2排出に特効薬はなく、様々な手法を使って多角的にアプローチする必要があります。

もちろんこのような状態は望ましくないですが、一方でこれはDAC技術に対する現実的な反対意見ではないと考えます。 第一に、今はクレジットを買わなければならない企業にとって、クレジット購入よりも安価にネットゼロを達成できるような、より効率的でCO2排出の少ない自社のオペレーションの開発に向けてインセンティブが生まれます。そして、このネットゼロのオペレーションへの移行中の時間が、クレジットでオフセットすることによって稼げ、その期間のCO2排出は、そうでない場合よりも確実に低くなります。第二に、CO2除去はCO2排出がゼロになったとしても必要です。たとえCO2の排出を即座に、地球規模で止めたとしても、大気中にすでに存在するCO2は、地球に温暖化の影響を及ぼし続け、海は上昇し、気候は変動し続けます。 こうした影響を抑えるためには、累積した大気中のCO2レベルを元に戻す必要があります。IPCCの最新の報告書によれば、地球温暖化を許容範囲内に抑えるためには、どのような方法であれ、大幅なCO2除去技術の導入が必要です。 このような技術を今開発しないことが、より大きなモラルハザードだと言えるでしょう。